2010/02/22

「天使の恍惚」(若松孝二監督)

CS放送で夜中に観た。
「エル・トポ」のホドルスキーや「イレイザーヘッド」のリンチほどカルトカルトしてないけど、ぶっ飛んでる映画だった。
何の脈略もなく突然ベットシーンが出てきて布団の中「燃える燃える首都が炎に包まれる」とか「新しい世界がどうのこうの」と言いまくってる。
これほど演技に身が入っていない濡場は一見の価値あり。
社会主義への過渡期の時代の夜の生活もいろいろと大変なようだ。
それにしても、孤立して行動する人が偉いことを説明するために、実に多くの言葉を費やしている。
この理屈っぽさは攻殻機動隊並だ。
しかしながら人間の内面の本質は不条理で混沌としている。
「Tomorrow is Another 」や「勝ったのは百姓だ」などと簡単に割り切れるほうが返って不気味だ。

なんだか、よく分かんないけど、めったに観れないものみちゃったと思っていたら、この監督の次回作「キャタピラ」がベルリン国際映画祭で主演女優賞を取ってしまった。
受賞記念の若松監督の作品のテレビ放映にとても期待している。
もし、監督の作品の特集を組んでくれたら、私のお小遣いの2割をスポンサー企業の製品購入にあてることをここに宣言する。
日本のテレビや映画は元気が無いと言われている。
お隣の韓国のエンターテイメントが輝いて見える。
だけど、日本はまだまだ大丈夫。
こんなぶっ飛んだ作品が劇場公開まで至るほどの懐を持っているのだから。

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2005/10/10

「BUS174」絶望的な共感、恐怖と憎しみの連鎖

ブラジルのオジキ宅を訪問したのは10年以上前。
ストリートチルドレンの虐殺を取り扱った書籍「風みたいな、ぼくの生命」が話題になった直後、
当時、本の内容に感化されていた僕は「警官は酷いよな」「それを指示する市民が多数存在しているのは理解できない」と言ったところ、
「安全な日本に居場所と仕事があるおまえなどに何がわかる」の一言でばっさり。

その土地で留まらざるをえない(他の場所に行くことができない)人たちの暴力に対する恐怖。
政府は言葉だけで当てにならない、
金持ちたちは拳銃を携帯したガードマンを雇い、防犯設備に平均年収の何倍もの金をかける・・・・
右の頬を打たれたときには左の頬を差し出せる、でも、右の頬を撃たれたら左の頬など差し出せない・・・
暴力を抑止するために、それを上回る暴力を相手に与えることを支持あるいは黙認せざるをえない人たちの事を、自分の感情だけで批判はしてはいけないと思った。

ブラジル映画「BUS174」
日本で昔の事件を検証したり再現する番組がある。
インタビューと実写のみで構成されるこの映画の前では茶番劇だ。

人質の恐怖
ストリートチルドレンの犯人の生い立ちは過酷すぎる。
ろくな訓練も受けず、指示連絡系統が無いまま、凶悪犯と対面する警官たちの恐怖も計り知れない
設備の老朽化で一旦暴動が起こると抑止できない刑務所の看守たちの恐怖
最後に「犯人を殺せ」と叫ぶ市民の暴力に対する怒りと恐怖

この映画に悪人は一人もいない。
みんな、それぞれの立場で、恐怖と向き合いながら必死に生きている。
気の毒だと思う、怖かったろうと思う、だけどそれ以上のことは何もできない。
絶望的な共感しかできなかった。

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2005/10/05

亀も空を飛ぶ

亀も空を飛ぶ

儲けてなんぼの商業主義の映画では無い!!
だから、ドキドキ、ワクワク、見た後、良い気持ち良さなんてものを期待してはいけない。
綺麗な涙を流して心を洗うような映画でもない。

監督の魔法で、劇場の人達は一人のクルド人の子供に変えられてしまう。
そして、一緒にサテライトを見上げ、笑い、高揚、悲しみ、最後に残酷なまでに美しい不条理に心を引き裂かれる。

見終わった後、相方と何を話してよいかわからない。沈黙が続く。
だから、映画の後、豪勢な食事を予約してはいけない。

鑑賞後、パンフレットを買うことを勧める。出演した子役のその後が紹介されている。
その記事が唯一の救いだった。

も空を飛ぶ「岩波ホール」

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